夏目漱石の漢詩を鑑賞して参ります。
夏目漱石之漢詩鑑賞 第十作
七艸集評詩 九首 其二
幾 年 零 落 亦 風 流
幾年零落 亦風流
好 賃 江 頭 香 月 樓
好んで江頭の香月楼に賃す
麥 緑 菜 黄 吟 欲 盡
麦は緑 菜は黄 吟尽くさんと欲す
又 逢 紅 蓼 白 蘋 秋
又逢う 紅蓼 白蘋の秋
【語釈】※零落ーおちぶてること。 ※香月楼ー月香楼。平仄が合わないので転倒されたものと思われる。長命寺(墨田区向島にある北叡山延暦寺の末寺)の桜餅屋、山本屋のこと。 ◇七言絶句尤韻(流・樓・秋)
【通釈】落ちぶれた生活もかえって風流なものである。しかも川の畔の香月楼で下宿するのも好い。麦のいろはあおく菜の花は黄色のはなを咲かせている、此の風景を作詩しようと思いながら、いつの間にか紅いたでや白い浮き草の美しい秋になってしまうのだ。
【補説】少年漱石が子規の立場で作った詩であろう。月香楼を平仄の都合で香月楼と変えるなどは自由で楽しい、細部まで事実を重視した子規の反応は如何だったでしょうか。
つづく
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