漢詩鑑賞 夏目漱石之漢詩 第十三作

漱石漢詩

夏目漱石の漢詩を鑑賞して参ります。

夏目漱石之漢詩鑑賞 第十三作

 七艸集評詩   九首  其五

長 堤 盡 處 又 長 堤  
  長堤(ちょうてい)()きる(ところ) (また)長堤(ちょうてい)

櫻 柳 枝 連 櫻 柳 枝  
  (おう)(りゅう)(えだ)(つら)なる (おう)(りゅう)(えだ)

此 裡 風 光 君 獨 有  
 ()(うち)風光(ふうこう) (きみ)(ひと)(ゆう)

六 旬 閑 適 百 篇 詩  
  (ろく)(じゅん)閑適(かんてき) 百篇(ひゃくへん)()

【語釈】※長堤ーここでは隅田川の桜堤のこと。※風光ー景色。※六旬ー六十日間 『七艸集』(「蘭の巻」)の冒頭部分に「戊子夏從例得暇六十餘日((つちのえ)()の夏、例に従い暇を得ること六十余日)」とある。※百篇詩ーここでは七艸集のこと。 ◇七言絶句 上平声四支の韻(堤(通韻)・枝・詩)

【通釈】隅田川の桜堤が何処までも続き桜や柳も連なっている。この風景を君は六十日間も独占して、楽しく心静かに楽しみまた執筆をした。

【補説】この詩は起承の極めて軽快な作で同字重出の許される範囲を十二分に使っている。ただ転句の有の位置の使い方は我々は控えたい。君獨占 のほうが無難かと思います。

つづく

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