夏目漱石の漢詩を鑑賞して参ります。
夏目漱石の漢詩 第五作
離愁次友人韻
離愁 友人の韻に次す
離愁別恨夢寥寥
離愁 別恨 夢寥寥
楊柳如烟翠堆遥
楊柳烟の如く 翠堆 遥かなり
幾歳春江分袂後
幾歳か 春江 袂を分つの後
依稀纖月照紅橋
依稀たる繊月 紅橋を照らす
【語釈】〇寥寥ーもの寂しいさま。〇翠堆ー緑の丘。〇依稀ーぼんやりしてはっきりしないさま。〇繊月ー三日月 ◇七言絶句蕭韻(寥・遥・橋)
【通釈】別れのかなしさは夢にもさびしく、柳の芽も青々とけぶっている。君と春の江のほとりで別れてより幾年か経ち、今はぼんやりと三日月が朱塗りの橋を照らしている。
つづく
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