夏目漱石の漢詩を鑑賞して参ります。
夏目漱石之漢詩鑑賞 第十四作
七艸集評詩 九首 其六
浴 罷 微 吟 敲 枕 函
浴し罷めて 微吟 枕函を敲く
江 樓 日 落 月 光 含
江楼 日落ちて 月光含む
想 君 此 際 苦 無 事
想う君 此の際 無事を苦しみ
漫 數 篝 燈 一 二 三
漫りに篝燈を数う 一 二 三
【語釈】※枕函ー枕のはこ 箱枕のこと ※江楼ー川のほとりの高殿。ここでは子規の滞在していた隅田川沿いの月香楼のこと。 ※篝燈ーかがり火。漁り火 ※苦無事ー暇を持て余すこと。 ◇七言絶句 下平声十三覃の韻(函・含・三)
【通釈】入浴がすみ、箱枕をたたき調子をとりながら、詩を微に吟じておられる。川沿いの楼閣はいつしか日が落ち月の光が差し込む。こんな時暇を持て余して君はかがり火を一二三と数えておられるであろう。
つづく
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