漢詩鑑賞 夏目漱石之漢詩 第十七作

夏目漱石の漢詩を鑑賞して参ります。

夏目漱石之漢詩鑑賞 第十七作

     七艸集評詩  九首 其九

長 命 寺 中 鬻 餅 家
 長命(ちょうめい)寺(じ)中(ちゅう) 餅(もち)を粥(ひさ)ぐ家(いえ)

當 壚 少 女 美 如 花
 当壚(とうろ)の少女(しょうじょ) 美(うつく)しきこと花(はな)の如(ごと)し

芳 姿 一 段 可 憐 處
 芳(ほう)姿(し)一段(いちだん) 可憐(かれん)なる処(ところ)

別 後 思 君 紅 涙 加
 別後(べつご)君(きみ)を思(おも)うて 紅涙(こうるい)加(くわ)わる

【語釈】※長命寺ー長命寺はすでに説明済みであるが、(墨田区向島にある北叡山延暦寺の末寺)の桜餅屋、山本屋のこと。※鬻餅家ー餅を売る家「粥」は売るの意。子規が間借りをしていた月香楼は桜餅を商っていた。※當壚少女ー当壚は酒屋の店番のことであるが、ここでは月香楼の娘、おろくをさす。※紅涙ー美人の涙 ◇ 七言絶句 下平声六麻の韻(家・花・加)

【通釈】長命寺境内の名代の桜餅屋の月香楼の娘は花のような器量好しである。その姿の一段と可憐に見えるのは君と別れた後の君を思う涙が加わったからであろう。

つづく

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