夏目漱石の漢詩を鑑賞して参ります。
夏目漱石之漢詩鑑賞 第六作
即 事
即 事
楊柳橋頭人往還
楊柳 橋頭 人 往還す
綠蓑隱見暮烟間
緑蓑 隠見す 暮烟の間
疎鐘未破滿江雨
疎鐘 未だ破らず江に満つるの雨
一帶斜陽照遠山
一帯の斜陽 遠山を照らす
【語釈】〇緑蓑―緑のみの。〇暮烟ー夕もや。〇疎鐘ー時々響く鐘のおと。 ◇七言絶句刪韻(還・間・山)
【通釈】柳の木が生えている橋のほとりを人々は行き来している。夕もやの中漁師の緑色の蓑が見えかくれする。鐘の音が川面に響き、夕日が遠くの山々を照らしている。
【補説】転句では川面に雨が降り、結句では遠山が夕日に染まっていると云う風景設定である。事実なのか机上の作でしょうね。辻褄があうかどうか、多くの唐人の作例からですと、滿江水ー江水に満つか、滿江響ー江に満ちて響く。くらいが無難。
つづく
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