漢詩鑑賞 夏目漱石之漢詩 第九作

漱石漢詩

夏目漱石の漢詩を鑑賞して参ります。

夏目漱石之漢詩鑑賞 第九作

七艸集評詩 九首 其一

青 袍 幾 閲 帝 京 秋
袍幾たびか閲す 帝京の秋

酒 點 涙 痕 憶 舊 遊
酒は涙痕を点じて 旧遊を憶う

故 國 烟 花 空 一 夢
故国の烟花 空しく一に夢む

不 堪 他 郷 寫 閑 愁
他郷に堪えずして 閑愁を写す

【語釈】※青袍ー書生 昔学生は青い服を着た。※閲ー経過する。経る。※帝京ー帝京は東京。※秋ーここでは年月。※舊遊ーここでは古い交際。※故國ー故郷。※烟花ー春の美しい景色。空一夢ーむなしく夢をみること。※閑愁ーいつの間にかわき起こる愁い。 ◇七言絶句尤韻(秋・遊・愁)

【通釈】※書生として東京にくらし、別れてきた友人との交遊を思い涙を流している。(承句は詩的な誇張)故郷はすっかり春だろうナアー故郷を離れた東京にいてこの愁いを認めている。

【補説】「七艸集」は、正岡子規が、第一高等中学校在学中だった明治二十一年の夏休みに、長命寺境内月香楼に寄宿し、足かけ三ヶ月滞在して執筆したものである。そして子規は、友人に回覧して批評をもとめた。この求めに応じ、漱石が「七艸集評」を書き末尾に九首の詩を添えたのは、明治二十二年五月のことである。ここではじめて、漱石の号をつかいました。

つづく

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